
「なんで昨日検索した商品の広告が、全然関係ないサイトでも出てくるんだろう……」
スニーカーを一度検索しただけで、その後ずっとスニーカーの広告が追いかけてくる。旅行先を調べたら、どこを開いても旅行広告が出てくる。「監視されてるみたいで気持ち悪い」と感じた経験がある人は多いと思う。
これは「トラッキング」と呼ばれる仕組みで、ウェブサイトや広告業者があなたのオンライン行動を追跡して、その情報を広告に活用しているからだ。
「VPNを使えばトラッキングを防げるのか?」という疑問を持つ人は多い。答えは「一部は防げるが、完全には防げない」だ。VPNはIPアドレスを隠すことでトラッキングの一部を妨害できるが、CookieやフィンガープリントといったIPアドレスに依存しないトラッキング手法には、単純なVPNだけでは対応できない部分がある。
この記事では、トラッキングの仕組みをわかりやすく解説したうえで、「VPNで防げるトラッキング・防げないトラッキング」を正直にまとめた。さらに、トラッキング対策機能を内蔵した最新VPNの情報も紹介する。
まず理解する:トラッキングとはどういう仕組みか
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トラッキングとは、ウェブサイト・広告業者・データ収集企業があなたのオンライン上の行動を追跡して、データを収集・分析する行為だ。収集されるデータは「どのサイトを見たか」「何を検索したか」「どんな商品を見たか」「いつどこからアクセスしたか」などだ。
このデータをもとに、「あなたはスニーカーに興味がある」という個人プロファイルが作られ、ターゲット広告として特定の商品が何度も表示されるようになる。利便性という面では役立つこともあるが、「知らないうちに行動を記録されている」という感覚はプライバシーの観点で多くの人が不快に思う部分だ。
トラッキングには主に3つの手法がある。これを理解しておくと「VPNが効くか効かないか」の判断ができるようになる。
トラッキングの3つの主要手法
手法① Cookie(クッキー)によるトラッキング
Cookieとはウェブサイトがブラウザに保存する小さなテキストファイルだ。あなたがサイトを訪問すると、そのサイトがブラウザにCookieを保存して「この人は〇〇を見た」という情報を記録する。次回同じサイトを訪問したとき、そのCookieを読み取ることで「前回見た商品」が再び表示されるような仕組みだ。
特に問題とされるのが「サードパーティCookie」で、訪問しているサイトとは別の企業(広告業者など)がブラウザに保存するCookieだ。これにより、異なるサイトをまたいであなたの行動が追跡される。Googleなどの広告ネットワークが多数のサイトに広告コードを設置することで、あなたがどのサイトを訪問したかを横断的に把握できる仕組みだ。
手法② IPアドレスによるトラッキング
ウェブサイトにアクセスするとき、アクセス元のIPアドレスがサーバー側に記録される。IPアドレスからはアクセスしてきた国・地域・使用しているプロバイダーなどがわかる。同じIPアドレスからの複数のアクセスを紐づけることで、特定のユーザーのパターンを把握することができる。
手法③ フィンガープリントによるトラッキング
これが現在最も厄介なトラッキング手法のひとつだ。フィンガープリント(ブラウザフィンガープリント)とは、ブラウザやデバイスから収集できる情報を組み合わせて、個人を識別する手法だ。
収集される情報には、使用しているOSのバージョン・ブラウザの種類とバージョン・インストールされているフォント・画面解像度・タイムゾーン・言語設定・インストールされているプラグイン・GPU情報などが含まれる。これらを組み合わせると、同じ組み合わせを持つ人が世界中でほぼいないレベルの「指紋」が作られる。
フィンガープリントの最大の問題は、Cookieのように削除したり、IPアドレスのように変えたりできないことだ。ブラウザを変えても、シークレットモードを使っても、VPNでIPを変えても、デバイスやブラウザの固有情報は変わらないため追跡が続く。
体験談:「VPNを使っているのに広告が追いかけてくる」と思ったとき

VPNを使い始めてしばらく経ったころ、「これでトラッキングも防げているはず」と思っていた。でも、ある日気づいた。VPNをオンにした状態で靴を検索したのに、その後もずっと靴の広告が出てくる。「IPアドレスが変わっているはずなのに、なぜ?」と不思議に思って調べた。
答えはCookieだった。VPNでIPアドレスを変えても、ブラウザに保存されたCookieは消えない。GoogleアカウントにログインしていればGoogleは行動を把握しているし、ブラウザのCookieが残っている限り、サイトはあなたを「前来た人」として認識し続ける。
「VPN=完全なトラッキング拒否」という思い込みが崩れた瞬間だった。VPNはトラッキング対策のひとつではあるが、単独ですべてを解決するものではないことを、このとき初めて実感した。
VPNで防げるトラッキング・防げないトラッキング
VPNで防げること:IPアドレスベースのトラッキング
VPNを使うとIPアドレスがVPNサーバーのものに置き換わるため、IPアドレスをもとにした位置情報・プロバイダー情報の追跡を防げる。同じIPアドレスから複数のサイトにアクセスしているという行動パターンの追跡も、接続のたびにIPが変われば紐づけにくくなる。
また、ISP(インターネットプロバイダー)によるアクセス履歴の記録もVPNで防ぎやすい。暗号化された通信はISPから見えないため、「どのサイトにいつアクセスしたか」という情報がISP側に記録されにくくなる。
VPNだけでは防げないこと:Cookie・フィンガープリントによるトラッキング
VPNを使ってもCookieはブラウザに残ったままだ。サードパーティCookieによるサイト横断的なトラッキングは、VPNだけでは防げない。Googleアカウント・Facebook・Amazonなどにログインしている状態では、それらのサービスは行動を把握し続ける。
フィンガープリントについてはさらに対策が難しい。IPアドレスをVPNで変えても、使っているデバイスやブラウザの固有情報は変わらないため、フィンガープリントによる個人識別は続く可能性がある。
つまり「VPN=トラッキング完全拒否」ではない。VPNはトラッキング対策の重要な一手段だが、Cookie対策・フィンガープリント対策を別途講じる必要がある。
「防げること・防げないこと」一覧表
| トラッキング手法 | VPN単体 | VPN+トラッカーブロック機能 | 対策のポイント |
|---|---|---|---|
| IPアドレスによる追跡 | ◎ 防げる | ◎ 防げる | VPNのIP置き換えが直接機能する |
| ISPによる閲覧履歴記録 | ◎ 防げる | ◎ 防げる | 暗号化でISPに内容が見えない |
| サードパーティCookieによる追跡 | ✕ 防げない | ○ 大幅に防げる | トラッカーブロック機能で対応 |
| アカウントログインによる追跡 | ✕ 防げない | ✕ 防げない | ログアウト・別アカウント使用が必要 |
| フィンガープリントによる追跡 | ✕ ほぼ防げない | △ 一部対応 | 特化ブラウザ(Brave等)との併用が有効 |
| 広告トラッカースクリプト | ✕ 防げない | ◎ 防げる | NordVPN Threat Protection等で対応 |
VPN単体では足りない:組み合わせるべきトラッキング対策
対策① Cookieを定期的に削除する・サードパーティCookieをブロックする
ブラウザの設定からCookieを削除する習慣をつけよう。また、サードパーティCookieを「ブロックする」設定にすることで、サイト横断的な追跡を大幅に減らせる。ChromeはサードパーティCookieの廃止を進めていて、Firefox・Safariはすでにデフォルトでブロックしている。
対策② トラッキング対策機能を持つVPNを使う
単なるIPアドレスの置き換えだけでなく、トラッカーブロック・広告ブロック・マルウェアブロックを内蔵したVPNを選ぶことで、Cookie以外のトラッキングにも対応できる。NordVPNの「Threat Protection Pro」はトラッカーブロック・URLクリーナー・広告ブロック・マルウェアスキャンを備えていて、VPN接続なしでも動作するという特徴がある。
対策③ プライバシー重視のブラウザに切り替える
Brave・Firefox・Tor Browserはプライバシー保護に特化したブラウザで、フィンガープリント対策・トラッカーブロックをデフォルトで備えている。特にBraveはフィンガープリント対策に力を入れていて、VPNと組み合わせることでトラッキング対策の網を広げられる。
対策④ ブラウザ拡張機能を追加する
uBlock Origin・Privacy Badger・Ghosteryなどの拡張機能を使うと、ウェブサイト上のトラッカースクリプトをブロックできる。VPNと組み合わせることで、IPアドレスの保護とトラッカースクリプトのブロックを同時に実現できる。
対策⑤ 重要な場面ではシークレットモードを使う
シークレットモードではセッション終了時にCookieが削除されるため、継続的なトラッキングを防ぐ効果がある。ただし使用中のCookieは保存されており、完全な保護ではない。また、ISPやVPNからのアクセスは依然として見えている状態だ。VPNと組み合わせることで、より効果的なプライバシー保護になる。
NordVPN「Threat Protection Pro」:トラッキング対策に特化したVPN機能
VPN単体ではトラッキングを完全に防げないという問題に対して、NordVPNは「Threat Protection Pro(脅威対策Pro)」という機能で対応している。これはVPNの暗号化・IP保護に加えて、以下の機能を追加した統合セキュリティ機能だ。
トラッカーブロック機能では、ウェブサイトに埋め込まれた追跡スクリプト(トラッカー)を自動的にブロックする。広告ブロック機能では、煩わしい広告・ポップアップ・自動再生動画をブロックする。URLクリーナー機能では、URLに含まれるトラッキングパラメーター(「utm_source=」などの追跡用コード)を自動的に削除する。悪意あるウェブサイトブロック機能では、フィッシングサイト・マルウェア配布サイトへのアクセスを防ぐ。
特に注目したいのは「VPN接続なしでも動作する」という点だ。VPNを切断した状態でもThreat Protection Proのトラッカーブロック・広告ブロック機能は機能し続ける。つまりVPNをオフにしているときも、ある程度のトラッキング対策が維持される。
ただし2026年現在、Threat Protection ProはWindowsとmacOSのデスクトップアプリでのみ利用可能で、モバイル(iOS・Android)では使えない点には注意が必要だ。モバイルでは標準のThreat Protectionが使えるが、こちらはトラッカーブロックなど一部機能が限定される。
トラッキング拒否に使えるおすすめVPN3選
【トラッキング対策機能が最も充実】NordVPN|Threat Protection Proで総合的に対応
トラッキング拒否という目的でVPNを選ぶなら、現時点で最も充実した機能を持つのがNordVPNだ。「Threat Protection Pro」によってIPアドレスの保護だけでなく、トラッカースクリプトのブロック・広告ブロック・URLトラッキングパラメーターの削除まで、一つのアプリで対応できる。
NordVPNの公式サイトによると、Threat Protection Proは2025年6月だけで大量のスキャムサイト・マルウェア・トラッカーをブロックしたという実績がある。92%というフィッシング検知率という数値も複数の独立したレビューで確認されている。
ノーログポリシーは複数回の第三者機関による監査済みで、VPN経由の通信を記録しないことが担保されている。世界111カ国に6,000台以上のサーバーを展開していて、速度・安定性ともに業界トップクラス。トラッキング対策とVPN本来の機能の両方を最高水準で使いたい人に最もおすすめしやすい。30日間の返金保証あり。
NordVPN[公式サイト]【コスパ重視のトラッキング対策に】Surfshark|CleanWeb機能で広告・トラッカーをブロック
Surfsharkは「CleanWeb(クリーンウェブ)」という機能でトラッキング対策を提供している。CleanWebはウェブサイト上の広告・トラッカー・マルウェアリンクをブロックする機能で、VPN接続と同時に有効化できる。
CleanWebはすべてのプランで利用可能で、追加料金なしでトラッキング対策機能を使える点がコスパに優れている。iOS・Android・Windows・Macと幅広いプラットフォームで利用できる。同時接続台数が無制限なので、スマホ・PC・タブレットすべてのデバイスでトラッキング対策を有効にできる点も評価できる。
長期プランの月額換算は大手VPNの中でも最安水準で、「トラッキング対策もしたいけどコストを抑えたい」という人に向いている。ノーログポリシーは監査済みで、100カ国以上にサーバーを展開。30日間の返金保証あり。
SurfShark[公式サイト]【安定性重視・初心者にも】ExpressVPN|シンプルに使えてトラッカーブロック内蔵
ExpressVPNもトラッカーブロック機能を内蔵していて、広告や追跡スクリプトをブロックできる。NordVPNのThreat Protection Proほど高度な機能ではないが、VPNと一体化したシンプルな設定で使えるため初心者にも扱いやすい。
接続の安定性が業界トップクラスで、VPN接続が切れにくいことも長時間のトラッキング対策維持につながる。24時間対応の日本語ライブサポートがあり、「トラッカーブロックの設定がわからない」「どう使えばいいか」という疑問も日本語で相談できる。94カ国以上にサーバーを展開していて、ノーログポリシーは第三者監査済み。30日間の返金保証あり。
ExpressVPN[公式サイト]3サービスのトラッキング対策比較表
| 項目 | NordVPN | Surfshark | ExpressVPN |
|---|---|---|---|
| トラッカーブロック機能名 | ◎ Threat Protection Pro | ○ CleanWeb | ○ トラッカーブロック内蔵 |
| 広告ブロック | ◎ あり | ◎ あり | ○ あり |
| URLトラッキングパラメーター削除 | ◎ あり(Threat Protection Pro) | △ 限定的 | △ 限定的 |
| VPN切断時も機能するか | ◎ 機能する(Threat Protection Pro) | △ VPN接続時のみ | △ VPN接続時のみ |
| モバイル対応 | △ 標準版のみ(Pro版はPC限定) | ◎ 全OS対応 | ◎ 全OS対応 |
| ノーログ第三者監査 | ◎ 複数回完了 | ◎ 完了 | ◎ 完了 |
| 同時接続台数 | 10台 | ◎ 無制限 | 8台 |
| 価格帯(長期プラン) | ○ 中程度 | ◎ 最安水準 | △ やや高め |
| 日本語サポート | △ 英語メイン | △ 英語メイン | ◎ 24時間日本語対応 |
| おすすめな人 | 総合的なトラッキング対策重視・PCメイン | コスパ重視・スマホも含む全デバイス | 安定性・初心者・日本語サポート重視 |
よくある質問
Q. シークレットモードとVPNを組み合わせれば完全にトラッキングを防げる?
シークレットモードはセッション終了後にCookieを削除するため、継続的なCookieトラッキングを防ぐ効果がある。VPNと組み合わせることでIPアドレスの保護も加わる。ただしシークレットモード使用中もCookieは保存されているし、フィンガープリントによる追跡は防げない。「より安全になる組み合わせ」ではあるが「完全に防げる」とは言えない。
Q. フィンガープリントによるトラッキングを防ぐ方法はある?
完全に防ぐのは難しいが、対策はある。Braveブラウザはフィンガープリントのランダム化機能を搭載していて、追跡精度を下げられる。Tor Browserは多くのユーザーが同じ設定を使うため、フィンガープリントで個人を特定しにくくなる。ブラウザ拡張機能のCanvasBlockerやUBlock Originも一定の効果がある。VPNと組み合わせることで、IPアドレス追跡とフィンガープリント追跡の両方をある程度対策できる。
Q. 広告ブロッカーだけ使えば、VPNは不要?
広告ブロッカーとVPNは役割が違う。広告ブロッカーはトラッカースクリプト・広告をブロックするが、通信の暗号化・IPアドレスの保護・ISPによる監視からの保護は行わない。VPNはこれらのネットワーク保護を担うが、Cookieによるトラッキングには直接対応しない。理想的にはVPN+広告ブロッカーを組み合わせることで、それぞれの弱点を補い合える。NordVPNのThreat Protection Proはその両方を一つのアプリで提供している。
Q. GDPRやCookie同意バナーを拒否すれば追跡されない?
EU圏のサイトで表示されるCookie同意バナーで「拒否する」を選択すれば、そのサイトのサードパーティCookieによる追跡を法律的に拒否できる。ただし実際には拒否しても追跡が続いているケースが報告されていて、技術的な実装が不完全なサイトは少なくない。Cookie同意の拒否は法的な手段としては有効だが、技術的な対策(VPN・広告ブロッカー・プライバシーブラウザ)と組み合わせることが重要だ。
Q. VPNを使うだけでGoogleやFacebookのトラッキングを防げる?
防げない。GoogleやFacebookはCookieとアカウントログイン情報を通じてあなたの行動を把握する。VPNでIPアドレスを変えても、Googleアカウントにログインしていればそのアカウント経由で行動は記録される。Googleのサービス全体(Gmail・YouTube・Google検索・Google Maps)での行動はアカウントに紐づいている。これを防ぐには、ログアウトした状態でプライバシー重視のブラウザ(Brave・Firefox)を使い、VPNを組み合わせる方法が有効だ。
まとめ:VPNはトラッキング対策の重要な一手段。でも単独では完全ではない
VPNはIPアドレスベースのトラッキングとISPによる監視を防ぐのに有効な手段だ。ただしCookieによるサイト横断追跡・アカウントログインによる個人特定・フィンガープリントによる識別には、VPN単体では対応が難しい部分がある。
「トラッキングを徹底的に拒否したい」なら、以下の組み合わせが現実的に効果が高い。VPN(IPアドレス保護・ISP監視対策)+トラッカーブロック機能(広告・トラッカースクリプト対策)+プライバシー重視ブラウザ(Cookie・フィンガープリント対策)+Cookieの定期削除(継続追跡の防止)という組み合わせだ。
総合的なトラッキング対策機能を一つのアプリで実現したいならNordVPN(Threat Protection Pro)、コスパ重視で全デバイス対応ならSurfshark(CleanWeb)、安定性と日本語サポートを重視するならExpressVPNが向いている。いずれも30日間の返金保証があるので、実際に機能を試してから判断してほしい。最終的な選択はご自身でお願いしたい。
※本記事で紹介しているVPNサービスの機能・料金・仕様は変更される可能性があります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。また、本記事の内容はあくまで参考情報であり、完全なトラッキング防止を保証するものではありません。


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